三重の企業人たち

桑名三重信用金庫 / 中澤康哉理事長

北勢および中南勢を掌中にできた。しかし、規模の拡大がサービスの低下につながってはならない。まずは、自行の内部を整え、労働力不足の解消に知見を絞り、働き方を改革して体力を付ける。その上で、2行の企業文化の差異を埋め、地域活性化の鍵となる中小企業の支援・育成に邁進する。地元とともに歩む「くわしん」の変らぬ理念である。

金融機関の再編事情

― このたびの合併、おめでとうございます。はじめにその経緯についてお尋ねします。

中澤 一昨年(2017年)の春、三重信金より合併の打診を受けましたが、当時はまだその気持ちもありませんでした。ただ、四日市市、いなべ市、岐阜県および名古屋市の一部を営業圏とする桑名信金にとって、規模拡大で県南部へのサービス向上が期待できるものと考え、昨年1月に合併合意を発表し、事務システム等を精査の上、先日2月25日合併に至りました。

― 合併で扱う顧客は?

中澤 桑名信金は製造業が多く、三重信金はサービス業、建設業が中心でした。合併でこれらすべての事業者を扱うことになり、これぞスケールメリットと言うことができます。

― 金融機関の再編が続いていますが、この動きをどう見ていますか。例えば、三重銀行と第三銀行について

中澤 現在は2行を傘下に置く三十三フィナンシャルグループが統率しています。2行は2021年5月1日に合併し、「三十三銀行」としてスタートする計画です。
 

― 近県での合併の状況はいかがですか。?

中澤 平成28年1月に大垣信用金庫と西濃信用金庫の合併がありました。資金規模も約7500億円で、私どもと同水準です。

― 静岡県内の状況は?

中澤 今年1月に合併した浜松信金と磐田信金は資金規模が2兆6千億円と地銀並み。また、3月には掛川信金と島田信金が合併して新たなスタートを切ります。さらに7月には静岡信金と焼津信金の合併が予定されていて、こちらは1兆5千億円規模。掛川信金と島田信金の合併が私どもに近い水準となります。

― 相続く合併の背景にあるのはやはりマイナス金利による経営悪化でしょうか。

中澤 静岡県は12の信金があります。三重県には5金庫ありましたが、合併で1つ減ります。経済規模こそ異なりますが、このたび私どもが合併したのは、同じ東海地区の信金として多少の影響を受けたことが考えられます。

― 今後の事業展開について伺います。はじめに営業部員の配置について

中澤 当面は各行の職員が従来のテリトリーで活動しますが、いずれは交流を図って行かなければなりません。それには、金融知識のレベルアップを含め、徹底した人材教育が必要です。職員間のレべルをそろえてお客様に対応していくつもりです。

消費税増税に備える

― 消費税増税を控えた今の金融市場の状況は?

中澤 製造業を中心に設備投資が活発で、景況感はよいと思います。企業とりわけ製造業の一番の課題は人手不足。外国人も積極的に採用していますが、企業間で争奪しているのが現状。介護施設も同様、外国人労働者に頼らざるを得ないのが実状です。ただ、北勢地域に比べて、県南部は高齢化と人口減少が進んでいますから、人手不足の問題は深刻です。

― 確かに、製造業部門も介護職施設も有効求人倍率は高いですね。

中澤 失業率も低く、早急に人手不足対策が求められています。小売業などは大変で、女性や高齢者の方の再雇用を検討する企業もあるようです。地域経済を動かしているのが中小企業なのですから、地域活性化を進めるエネルギーとして、早く元気になってもらわないと。

― 地域のお客様へのサービスの拡充については?

中澤 低金利の時代です。リスクはともないますが、投資信託や保険に投資していただく流れをつくっていかないと。しかし、日本人の気質から言って、預貯金を選ぶ人が大半だと思います(笑)。

― 合併後、店舗が重なる地域は?

中澤 それは、ありません。桑名信金の南端は四日市市で、三重信金の店舗網は津市以南でしたから。ちょうど鈴鹿市と亀山市が空白地帯になっていて、これをなんとかしたい。

キャッシュレスの時代にあって

― 消費税増税にあわせて軽減税率が導入され、さらに、カード決済時にポイント還元が行われる可能性が出てきました。進むキャッシュレス化に対するお考えは?

中澤 大規模スーパーではレジ周りの対応もできるのでしょうが、大変なのは小規模店。カード決済にも充分対応できるかどうか。設備投資のための補助金申請はともかく、実際使うときの段取り手順はどうでしょう。簡単ではありません。キャッシュレス化は必要とは思いますが、まだまだ地方にあっては現金主義が多数派ではないでしょうか。手数料が必ることの心理的な負担は想像以上に大きいものがあると考えます。

― 一方、外国ではカード普及率が高いことが言われます。今日、外国人旅行者が激増していることを考えれば、キャッシュレス化は避けられないのでは。

中澤 話を桑名市に限れば、外国人観光客が多いのは「長島アウトレット」で、市内で見かけることは稀です。潮流はキャッシュレス化にあっても、実態はまだまだ…。でも、これを進めないと時代に乗り遅れてしまうのではないかと思います。

働きやすい職場であるために

― 「働き方改革」について伺います。

中澤 「働き方改革」が目指すのは、仕事の効率を上げることにあって、残業を減らすことではありません。残業時間が減ったという既成事実の上で、いかに仕事の生産性を上げるかが重要です。今回の合併を機に、働きやすい職場環境とはどうあるべきかを模索し続けます。私どもが「働き方改革」で重視するのが、女性にとってどうか
という視点です。産休の間の研修制度を充実するなどして定着率を向上させることを検討しています。

― 女性にとって働きやすい職場であるために保育所を企業内に設けるケースも増えつつあります。

中澤 金融機関の不動産を有効活用して、保育所にお貸しすることは考えられます。その中に私どもの職員の子どもさんに入ってもらうわけです。

― 保育所に限らず、他の賃貸事業も考えられそうですね。

中澤 半公的な、たとえば老人施設などが考えられます。地域に役立てることを前提に検討してまいります。人が集まるカフェなど可能であるかもしれません。

― 「くわしん福祉文化協力基金」に代表されるCSRは今後どのように

中澤 三重信組のお客様の範囲にまで拡大していく考えです。

― 新しい出立に際しての抱負など

中澤 販路拡大、課題解決、補助金申請は中小企業支援の最大テーマであり、このたびの合併で県南部に事業拡大を図っていくとき、製造業を中心に扱っていたこれまでとは別の、より広い視野をもって市場を見つめる必要があります。可能ならば、県下全域の産業構造の特徴を知っておくことが望ましい。さて、このたびの合併で営業エリアが拡大したわけですが、そのためにサービスが低下したのでは本末転倒です。私どもは広域にわたってさらなるサービスの向上に努め、みなさんと共に発展させていただきたいと願っています。三重信金と合併はしましたが、企業文化はそれぞれ異なります。徐々に交流を深め、新しい桑名三重信用金庫の職員として頑張ってまいりますので、引き続きのご支援ご協力をぜひともお願いします。

― 規模拡大で、いっそうの飛躍を祈念します。本日はありがとうございました。

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