PERSON~三重の人物紹介

向陽台高等学校古川学園キャンパス / 岡出昭宣副校長

岡出昭宣

岡出昭宣 – 学校法人古川学園、向陽台高等学校古川学園キャンパスの副校長。体験入学で彼は、参加した中学3年生の親たちに自身の想いを語る。そんな彼の熱い教育への思いを、彼自身の言葉で語ってもらった。

祖父の影響で教師を志す

 生まれが三重で育ったのは兵庫県の宝塚でした。祖父が三重で小学校の校長をしていまして、私がたしか5歳の時に他界したと思うのですが、何年経っても全国にいる教え子が毎年墓参りにやって来てたんです。子供達から本当に慕われた先生だったんですね。そんな話を聞いて育ったからですかね、「教師になりたい」と漠然と思うようになったんです。
 高校3年になって担任と進路について話をした時、担任に「お前の希望する大学には行けない」と言われました。でも教師になるには大学を卒業しないとダメですよね。だから親に無理を言って何校か受験しました。結果は、担任の言うことが正しかった(笑)。で、浪人することになって、近隣の予備校に通うことにしました。そこを選んだのは授業料が一番安いからでした。「そこしかダメだ」って親に言われて仕方なく。その予備校のパンフレットには各教科、違う先生が載っているんです。英語の先生は外国人ですし。でも入ってみると先生は一人で、その人が全教科教えていたんです。詐欺みたいな話ですよね(笑)。凄い先生でした。夏はビール飲みながら授業するし、答えられないとチョークを投げて『アホ!!』って罵倒するんです。その先生の持論は「大学に入るには、入試用の勉強をしなければならない」。例えば「英語の長文も、5文型さえちゃんと理解していればなんとなく内容は理解できる。歴史は明治~昭和初期が出題される事が多いが、受験生はあまりそのへんをやらない。古代からではなく現代史から勉強すべき」という具合でした。歯に衣着せずにズバズバ言う先生でしたけど、その先生のおかげで生まれて初めて勉強の仕方が分かったような気がしました。教え方の上手な、カリスマ性のある先生でした。
 翌年、地元から近い大学の経済学部に合格しました。念願の大学生になって、学生時代はひたすら麻雀に打ち込みました(笑)。なんとか4年間で大学を卒業しまして、念願の教員免許も取得できました。ちょうどその頃、父親が定年になって三重に帰ることになったんで、結果的に私も三重県に住むことを決めました。

教師にはならず、なりゆきで材木会社に就職

 三重に来てすぐに親戚の経営する材木会社で働きはじめました。トラックで材宅資材を運ぶ仕事です。最初はアルバイトだったはずなんですが、気づいたら正社員になってまして(笑)。仕事は面白かったですね。仲間もいい人ばかりだったし、今思えば貴重な経験をさせていただき、感謝の気持ちでいっぱいです。教員採用試験ですか?受ける気はあったんですが、結局受けませんでした。仕事を辞めたくなかったし、勉強する暇もなかった。バブルの頃で収入も良かったんですよ。
 そこで約6年間働きました。そんなある日、古川学園が教員募集をしていると耳にし、そして日に日に、若い頃からの「教師になりたい」という夢が蘇ってきたんです。それで受けに行ったら、採用してもらえまして。教師という第二の人生をスタートさせたんです。先代の理事長である古川熊次郎先生は大変温情味があるいい方でね。もう他界されましたけど、今でもその先生の意思を受け継いで頑張らなあかんなぁって思っています。

一般社会で役に立つ勉強を

 学校で勉強する内容は、全てが社会で役立つものとはかぎりません。ひょっとすると、出てしまえば2度と使わないような事が多いかもしれないんです。数学の難解な公式みたいに。何かの教科の導入で、例えば天気図の読み方を教えると子供はすごく興味を持つ。学習意欲がわくんです。勉強っていうのは、心が感じたことを頭で理解し表現するものだと思うんです。それを遮断して暗記だけにしてしまうから、興味が沸かないし面白くなくなるのではないでしょうか。それに一般社会では、もっと違うことを知ってた方が役に立つ。英語は文字じゃなくて耳で覚えた方がいい。最初は会話が苦手で相手の言うことがわからなくても、笑顔とジェスチャーで何とかなる(笑)。数学は四則計算が本当に大切。これをしっかり勉強しないと。特に少数を知らないと銀行の利息計算がわからない。知識は使って初めて知恵になるんです。知ってるだけなら、どこかの芸能人がテレビで言ってるうんちくで終わってしまいます。

いじめ、差別を許さない

 ウチの学校のスローガンは「いじめ、差別を許さない学校」です。「いじめのない学校」ではなく「許さない学校」なんです。「いじめはあります」って校長が公言している学校もあるらしいですけど、教師がそんなこと言ったら子供たちは安心して学校生活が送れません。「いじめはあるかもしれないけど、先生は絶対にいじめを許さない」と言ってくれたら、子供たちは安心できるんです。最初から「いじめはあります」って、そんなの学校じゃないですよ。
持っています。子供たちは「いじめてるつもりじゃない。ふざけてただけだ」と言う。先生たちも「証拠がない」という。これじゃいじめを止めることはできません。どこまでがふざけてて、どこからがいじめかをはっきり言う必要がある。相手が嫌がっていることを分かったうえでやるのがいじめ、相手が嫌がることを言うのもいじめ、無視するのもいじめ。「無免許でバイクに乗って警察に捕まるよりいじめの方が悪い」って私は言います。親は子供から「○○君がいじめられてるけどどうすればいい?」って相談されることがよくあります。「関わらない方がいいんじゃない?でもその子とは仲良くしてあげてね」。「でも仲良くすると僕までいじめられる」。そう言われると、もう親はそれ以上アドバイスできないんです。でもそれじゃダメだということが、自分の子がいじめられて初めて気づくんです。たとえ他人の子だろうが、いじめを知ったらすぐ学校に伝えないと。
 

ささいなことから不登校に

 
 不登校になる理由はささいなことです。勉強が苦手だとか、走るのが遅いとか、身体が大きいとか小さいとか、そういったことで馬鹿にされて学校へ行けなくなるケースも多いんです。誰にも相談できない。先生が「何かあったら相談しろ」と言うから相談すると、先生は解決しようと皆の前でそのことを話す。そうすると「先生にちくった」といって余計いじめられる。ますます学校に行けなくなる。だいたいそんな感じで通学が苦痛になり、不登校になっていきます。で、自分が学校へ行かないと、そのことが原因で両親がケンカをする。そうなると「自分は何のために産まれてきたのか?」と思うようになる。
 僕は義務教育の間は、死にたいくらいに辛いことがあったら学校へ行かなければいいと思ってます。学校でそんなにつらい目に合うぐらいなら、家で好きな勉強してる方がずっといい。でも現実には高校へ入る時、欠席が多いから行ける高校がほとんどないんです。ウチの学校は、そういう子たちも助けてあげられるような学校を目指しています。

努力が評価される学校に

 以前鈴鹿で、萩本欽一さんとお会いした時、「学校の先生をやってます」って言ったら、萩本さんは「頑張ってる子を応援する学校になって。でもそんな学校、今は少ないよね」って言われたんです。感銘を受けました。
 勉強の苦手な子って、今まで頑張ってきたのに褒められたことがあまりないんです。結果だけで評価される。百点とったら褒められるけど、30点取ったら頑張れといわれる。一生懸命勉強しても次の日忘れちゃう子もいるんです。でも、みんな頑張った姿を大人たちに認めてもらいたいんです。職員にも言うんです。「ウチらは進学校じゃないし、無理やり技術を身につけさせる学校でもない。一生懸命に頑張っている努力を評価してあげる学校にしよう。指導もつまらない校則を押し付けるんじゃなくて、その考え方や態度が世の中で通るか通らないかをはっきり教えよう」って。世間は結果しか見ませんよ、社会は利益を追求する場ですから。でも学校はそれじゃダメなんです。

卒業証書授受式

 卒業式はやはり感動しますね。ウチは卒業証書授与式ではないんです。様々な困難を乗り越え、自分の力で卒業証書を手にするんだから、卒業証書授受式なんです。3年前の体験入学の時、母親の袖をつかんで離さなかった子がこんな立派になって~そう思うと感無量です。
 修学旅行も面白いですよ。北海道へ行くんですけど、消灯時間がないんです。お風呂入るのも自由。ゲームの好きな子はプレステ持ってきて皆でゲームやってるし、夜中の3時に「先生、わたし中学の時、修学旅行行けなかったからすごく楽しい」って言ってくる子もいます。だからバスの中ではみんな寝てます。バスガイドさんは、本当はいらないんですよ(笑)。
 職員も皆、仲がいいですよ。ここの職員室はいつも笑い声があります。職員室から笑い声が聞こえてこない学校が、教室から笑い声が聞こえるはずがない。それと、私は「様子を見ましょう」っていう言葉が嫌いなんです。言われた方は「いつまで?」って不安を持ちますよね。ウチの先生たちは、すぐに何らかのアクションを起こします。それが子供たちにとって安心なんでしょう。

体験入学で話すことは、保護者の想いを代弁しているだけ

 皆さんは、明日が来るのが当たり前だと思ってますよね。今度の日曜、何しようか?って楽しみにしてますよね。でも、今まで子供なりにいろんな苦労をしてきて、胸の中にいろんな辛い思い出がつまっている子は、明日が来るなんて思いたくないんです。日曜、みんながどこかへ行くって言ってるけど、私は誘われるんだろうか?って、毎日不安だらけで生きてるんです。そんな子もウチには来てます。
 僕は体験入学の時は、保護者の方の代弁をしているつもりです。障害を持っている子のどこが悪いの?なんで勉強が苦手だからってそれだけで評価されるの?こんないい面もあるのに。今まで情操教育が大切とか言っておいて、なんで高校になったら学力に重点がおかれてふるいにかけられるの? 保護者の方は皆、絶対そう思ってますよ。私は「ウチの学校はそうじゃない。結果ではなく、頑張ったことを評価する学校です」ってはっきり言います。そして言ったからには、ちゃんとやろうと。全職員が「有言実行」を目指しています。

向陽台高等学校古川学園キャンパス

三重県四日市市安島2丁目6-9
TEL.059-352-2214
http://fg-furukawa.com/

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