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菰野町長 / 柴田孝之2

― 菰野町の町議会議員になったのはなぜですか?

柴田 きっかけは、依頼を受けて菰野町相手に裁判をしたことです。2回やりました。1回は「農地を宅地にするのを認めるかどうか」という裁判。2回目は「商品として作られた『菰野清水』総額300万円分をなんの決裁もなくただで配ってしまった」という裁判。決裁なしで町の財産が処分されるのは問題ですよね。でもそれをやった職員は「口頭で決裁を得た」と裁判で主張したんです。結局「口頭決裁」が認められて一審は負けてしまいました。判決には未だに納得いかないですけど、控訴はしませんでした。でもそれらの裁判がきっかけで、菰野町の政治の疑問点についていろいろ考えるようになったんです。子どもの医療費の無料化ができていない、中学校給食がいつになっても実現しない、水道料金が一気に値上げされる…。にもかかわらず、基金の10億円を使って駐車場を作ろうとしている。それで、弁護士という立場ではなく議員になって直接、町長さんにそのあたりの疑問をぶつけようと思ったんです。町議会議員になっても講師の仕事は続けられますから、収入は減りませんし。あと、父の体調が悪くなったので、介護の手伝いをしたいということもありました。

― 町長になろうと思ったきっかけは?

柴田 一昨年の町議会で「水道料金がいっきに1.5倍になるのはなぜか?段階的に上げるのではダメなのか?」という質問をしたんです。でも、まともに答えてもらえませんでした。それで悔しくて「町長選に出よう!」と決意しました。でも、町長になった後「なぜ段階的に上げるのはダメか」を説明してもらって、理解できました。企業債を極力借りない方が、金利負担の面からも得なんですよね。だからその時、そうやってちゃんと説明してくれればよかったんですけど、その時は全く相手にしてもらえませんでした。

― 町長選に出るにあたって、バックとかはあったんですか?

柴田 全くなかったです。応援してくれる人はいましたけど、組織立って応援してくれる人はいませんでした。だからどんな活動をしたかというと、チラシを作ってそれを菰野町中に一軒一軒配り歩きました。おかげで菰野町の道にはくわしくなりました。

― 当選すると思っていましたか?

柴田 奥さんとシミュレーションを重ねたんですが、そのとおりになれば当選も可能だと思ってました。政治に関心があっていろいろ発言する人って、実はそんなに数が多くないんです。大部分の人は政治に関心がない。だからそういう層に徹底的に私の主張を浸透させようと考えました。集会はしませんでした。集会に来る人って、もともと自分に投票してくれる人ですから、集会をやっても票は増えません。ただの動員です。逆に集会をやって人がたくさん集まると相手側は緊張します。だから相手を油断させるためにも、集会はやりませんでした。とにかく「駐車場より中学校給食を実施したほうがいいんじゃないか?」という私の思いを町民の皆様に伝えられたらそれでいいと思ってました。

― 町長になってみて、どうでしたか?

柴田 下積みしないでいきなり社長ですよ、こんなすごいことありません(笑)。当選して初めてわかったんですけどね。議員もいい仕事です。議員をやりながら弁護士も予備校講師もできますし。でもやりがいという点では、町長はどの仕事よりやりがいがあります。

― お話を伺ってて思うんですけど、岐路に立ったとき、損得ではなく「面白そうだから」「やりがいがあるから」といった視点で進路を選んでいますよね。

柴田 そうですね。私は豪邸に住みたいとかフェラーリに乗りたいとかいった欲求はありません。目先の損得よりやりがいの方が大切なんです。自分がやりたいことをやったら結果的にお金になった、という感じですね。

― 公約である「中学校給食の実施」「水道料金の値上げ見直し」「子どもの医療費の無料化」について、財源は確保できているんでしょうか?

柴田 実は水道料金はあまり下げてないんです。上げすぎたものを少し安くした程度です。昨年9月から順次実施の未就学児の窓口無料化と中学生の対象範囲の拡大による医療費無料化は、年間約2千万円です。給食は年間5千万円ぐらいかかるんですけど、その予算は、先ほど言った10億円の駐車場や5億円の菰野富士の公園整備、その他いろいろな事業を見直すことで捻出しようと考えています。中学校給食もデリバリーならそれほど予算はかからないんですけど、「食育」として実施するには、やはり自校方式もしくはセンター方式による給食が必要になってきます。どちらの方式を採用するのかを含めて、いろんな方法を考えていくつもりです。

― MaaS(※)を使った『おでかけこもの』 を導入されますよね。それについて町長のお考えを教えて下さい。

柴田 まだまだ課題も多いのですが、育てていけば良いものになると思います。使ってみるまではハードルが高いんですよね。でも使うとすごく便利です。200円でのりあいタクシーに乗れて、乗り換えもスムーズにできるんですから。

― 高齢者の方がアプリを使うのは難しいように思いますが?

柴田 電話を受けるオペレーターが楽できるんですよ。乗り継ぎは瞬時に表示されるので、電話された方に「何時にどこそこへ来て下さい」と伝えるだけで済みますから。

― 今年1月から実証実験が行われましたが、その結果はどうでしたか?

柴田 さすがに3月に利用者が減ったんですが、1月2月に関してはアクセス数はかなり多かったです。でも利用者は少なかった。やはり最初に使ってもらうまでのハードルが高いんですよね。今後はもっと使いやすくなるように改善していきます。

― 予算はどれぐらいかかるんですか?

柴田 年間3千万円ぐらいですね。2年目からは維持管理費だけになりますが、タクシー会社へ払うお金も含めると年間5千万円ぐらいかな。あと今年はバス1台と、タクシーも増やします。その予算が年間1億円ぐらいを予定しています。

― では最後に…。今後、どのような町政をしていこうとお考えですか?

柴田 公約で掲げたことはある程度やったので、今後は住みよい町にするために町民の意識改革をしたいと思っています。例えば誰かが倒れた時、どうがんばっても救急車は5分かかります。でも、そばにいた人がAEDが使えれば、助かる確率は高くなります。行政は大きいことは得意ですが、そういう細かいことは苦手なんです。ですから地域の皆様ひとりひとりが「住みよい町にするためにはどうすればいいか?」を考え、実行して頂く。一方、地域ではできない大きなことを行政が担当する。こういう考え方が浸透していけば、菰野町は素晴らしい町になると思います。それに、そうやって地域の皆様と行政がお互いに理解しあえれば、不満もたまらないと思うんです。私もそうですが、みんな目の前のことしか見えません。なぜこれをするのか?しないのか?ということを、理解して頂けるまでしっかり説明する必要がありますし、また逆に行政側も、地域の皆様のご要望が正しく理解できるよう、真摯に耳を傾けることが大切だと思っています。

(※)MaaS(マース)
バス、電車、タクシーといったあらゆる公共交通機関をITを用いて結びつけ、人々が効率よく便利に使えるようにするシステム。ヨーロッパでは本格的な取り組みがスタートし、日本でも鉄道会社や自動車会社などが中心となって研究が始まっている。

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