三重のプロゴルファーの草分け的存在にして、中部ゴルフ界の要職を歴任する重鎮、寺嶋プロ。ゴルフと共に生きたその人生を、かけ足でインタビューしてみた。
– ゴルフを始めたきっかけは?
小学校2年の時、近所に「志摩カントリークラブ(※1)」できたのがきっかけですね。家の近くにゴルフ場があるとやはり影響を受けまして、小学生の頃は、畑に缶詰の缶を埋めて、ゴルフ場から拾ってきたゴルフボールを打って遊んだもんです。そこらへんの木を切ってきてクラブ代りにしてました。「プロゴルファー猿」の世界ですね(笑)。それで、小学校を卒業するとキャディのアルバイトを始めたんです。中学から志摩カントリーでアルバイトするのがうちの近所では当たり前で、小学校の卒業式が終わると、卒業証書を持って志摩カントリーに行って、すぐキャディ研修を受けたんです。
– キャディのアルバイトをしながら、ゴルフの練習はできたんですか?
ほとんどできなかったですね。本格的に始めたのは高校を卒業して四日市カンツリーに勤めてからです。当時は今のような立派なクラブなんて持てなかったですから、友人の出口(出口栄太郎プロ・鈴峰ゴルフクラブ所属)は鍛冶屋で鉄の棒の先を曲げてもらって作ったクラブで練習してました。彼はゴルフ場が近かったんで、よく無断でコースに入って管理の人に追い回されてましたね(笑)。
– プロの道を志したきっかけは?
志摩カントリーに勤めていてた兄(寺島拓夫プロ・四日市カンツリー倶楽部所属)がプロになったのを見て、自分もプロになりたいと思いました。でもそれほど才能があるわけじゃなかったんで、高校を卒業する時「プロゴルファーになる」って言ったら、同級生はみな驚いたみたいです。それで、四日市カントリーでキャディとして働きながらプロテストを受けまして、27歳の時、やっと合格しました。遅咲きでした。
– 三鈴カントリーに移ったのはいつ頃ですか?
プロになってすぐですね。ちょうど三鈴がオープンすることになって、四日市には兄も含めてプロが3人いたんで、1人三鈴に移ったんです。
– 試合の成績はどうでした?
29歳の時ツアーに挑戦しました。中日クラウンズと北海道の全日空オープンで予選を通過しましたけど、それ以外は予選落ちでした。よく「プロなんだから試合に出れば?」って言われますけど、一回も試合に出たことがないプロがほとんどなんですよ。ローカルの三重県オープンとか中部オープンとかは出れますけど、全日本のツアーはなかなか出れません。プロは日本に3千人ほどですが、実際試合に出れるのは120人ぐらい。そのうちシードが70人。ほんの限られた人数なんです。三重県ではプロは男子が30人、女子が5人ぐらいいますが、今年、試合に出れるのは川村ぐらいです。それに、試合に出るためには、交通費や滞在費、エントリー費など経費は全て自分持ち。それで予選落ちしたらお金は1円も入ってきません。家族がいたりするとなかなか難しいですね。
– 試合に出ないプロは、どうやって稼いでるんですか?
ゴルフ場の専属プロになれば給料がもらえます。僕は三鈴カントリークラブに社員として入りましたから、年齢相応の給料はもらってました。でも今はセルフのゴルフ場が増えて、ゴルフ場もプロを雇わなくなってきてますね。あとはレッスンです。ブームの時は教室開けば10人20人は当たり前で、断るのに苦労したぐらいですけど、今はあまり集まりませんね。プロといっても生活は大変だと思いますよ。
– 今売り出し中の川村(※2)プロを教えられてたんですよね。
コースが空いた時間を使ってレッスンしてまして、それで、川村がゴルフをやってることを知って、そこへ呼んだんです。小学4年生の時です。
– 川村プロはどんな性格なんですか?
とにかくゴルフが好きですね。あと、自分で考えることができる子です。礼儀作法もしっかりしてますから、どこへ行っても嫌われないですね。今のジュニアにしては珍しくしっかりしてます。僕が言うのもなんなんですが、親がしっかりしてると思います。母親が川村に言うんですよ。「スコアが悪い時、嫌な顔をしていたら一緒に回っている人が気分悪い。嫌な顔をするならゴルフをやめなさい」って。逆にゴルフがうまいだけでチヤホヤされてきた子は、20歳前後でつまずくことが多いような気がします。
– 寺嶋さんのゴルフ人生を振り返ってみて、どんな感想をお持ちですか?
三鈴カントリーの仕事もできましたし、試合も1年間だけど出れた。レッスンも景気のいい時はたくさんの方を教えられた。協会の理事もやりました。ひとつの事を一生懸命やって結果を残したということはないんですけど、ゴルフに関するあらゆるところに首を突っ込むことができたことは良かったと思います。
– 寺嶋さんにとってゴルフの魅力とは?
俺は完璧なゴルフができた!なんて人はいないと思うんです。ほとんどの人はミスをして「次はもっと飛ばしたい、パターを入れたい、真っすぐ飛ばしたい」って。でも、またうまくいかない。そこで葛藤して、練習して…。いくつになっても、その繰り返しですよね。だから、ゴルフを始めた人はなかなかやめられないんだと思います。
三鈴カントリー倶楽部所属