選ばれる三重へ~平成29年度の県政を振り返り これからを展望する~

三重県に新たな歴史が刻まれた伊勢志摩サミットの開催から1年半が経過しました。県の知名度が高まり、平成28年の観光入込客数は4,189万2千人と、第62回神宮式年遷宮のあった平成25年を上回り過去最多となるなど、サミットの効果が現れています。
このようなサミットの効果を持続的に波及させるとともに、サミットの成果を生かして選ばれる三重として進化を遂げることができるよう、引き続き、オール三重でしっかりと取り組んでいきます。
ここでは、平成29年度のこれまでのトピックを振り返りながら、これからの県政について展望したいと思います。

サミエールの開館、サミットの効果

 伊勢志摩サミットからちょうど1年となる5月26日に、伊勢志摩サミット記念館「サミエール」が志摩市の賢島駅にオープンしました。サミエールでは、首脳会議で使用された尾鷲ヒノキの円卓や椅子を置き、見るだけでなく、サミットの雰囲気を体感していただいたり、映像や四面マルチモニターでのクイズなども取り入れ、楽しみながらサミットを学んでいただけるようにしています。さらにカフェが併設され、サミットゆかりのメニューが提供されています。
 開館以来ご好評いただいており、10月2日には、開館4ヶ月あまりで来館者数10万人を突破しました。今後とも県内外から多くの皆さんにお越しいただきたいと願っています。
 サミットの経済効果等については、平成28年9月に最終試算結果を発表しましたが、試算に使用した諸データの平成28年の実績値が確定したため、ポストサミットの経済効果を再試算したところ、平成28年の効果は320.6億円となりました。特に国際会議の開催件数が目標4件に対して実績が17件となるなど大きな効果が見られました。
 さらに、他にも日本酒の国内出荷量が対前年比で108%となったり、海外留学や海外研修等に参加した高校生が平成28年度は457人と前年度に比べ100人強増えるなど定量的、定性的に多くの効果が現れてきています。

お伊勢さん菓子博2017の開催

 4月21日から5月14日までの約3週間、第27回全国菓子大博覧会・三重「お伊勢さん菓子博2017」が県営サンアリーナをメイン会場に開催され、58万人を超える多くの来場者でにぎわいました。開会式には三笠宮彬子女王殿下にご臨席賜り、「素晴らしいお菓子の数々が多くの人と人とのご縁を結ぶことと思います。」とお言葉をいただいたところです。菓子博の開催に携わった方々のおもてなしにより人々の心がつながり、記憶に残る博覧会になったと思います。
 特に、県内の高等学校や専門学校の生徒が三重の食材をテーマに制作した工芸菓子や、高校生が考案したレシピをもとに商品化された新作菓子が人気を博しました。若い力が発揮され、菓子職人をめざす若者にとって大きな励みになったことと思います。
 また、菓子博を契機にアオサなどの三重の特産品を使った新しいお菓子が次々と開発されるなど三重のお菓子の魅力を多くの方々に発信できたと思います。このような成果を今後、県内の食関連産業の振興につなげていきます。

県立こども心身発達医療センター

 三重県では、半世紀以上前から肢体不自由児や発達障がい児等の医療・福祉に取り組んでおり、市町等と連携し途切れのない発達支援体制を構築してきました。
 発達支援が必要な子どもたちが健やかに成長するには、心と体の両面から総合的に支援することが重要であり、多くの関係者の悲願であった県立こども心身発達医療センターを6月1日に開設しました。
 子ども一人ひとりが、その子らしく豊かな人生を送ることができるよう、医師、看護師、保育士などのさまざまな専門人材が協力し合い、心と体の両面から専門性の高いチーム医療を提供することで、「子どもと家族のために」を実現する発達支援の拠点としての役割を果たしていきます。

スポーツ推進の本格展開

 今年の夏は、「レスリング王国・三重」を世界に印象付けたレスリング世界選手権やユニバーシアード競技大会でのメダルラッシュなど、スポーツで三重県出身の選手の活躍が光りました。また、10月に行われたえひめ国体では、残念ながら目標としていた男女総合成績10位台には届きませんでしたが、2年連続で競技別総合優勝を果たしたソフトテニスや出場選手7名のうち6名が入賞したセーリングなど三重県選手の活躍は県民の皆さんに勇気と感動を与えてくれました。
 10月21日にはインターハイや平成33年の三重とこわか国体のメイン会場となる「三重交通Gスポーツの杜伊勢 陸上競技場」がリニューアルオープンしましたので、大会の成功と三重県選手の活躍に向けて、引き続き競技力の向上や大会準備に取り組んでいきます。
 また、障がい者スポーツについては、平成33年の三重とこわか大会から正式競技となるボッチャの国際大会が、平成30年3月に、日本で初めて三重県で開催されることが決定しましたので、これまで取り組んできた普及活動や練習環境の整備、知名度向上のための情報発信をさらに進めます。

リニア中央新幹線の建設促進

 リニア中央新幹線については全線開業の時期が前倒しとなり新たな局面に入りました。
 9月11日に、リニア中央新幹線の「三重・奈良・大阪ルート」による1日も早い全線開業をめざす建設促進決起大会を開催しました。今回の大会は、奈良県、大阪府及び三重県の3府県の知事と、各経済団体やJR東海などの関係者が顔を合わせる初めての機会となり、名古屋・大阪間のルートや駅位置の早期確定に向けた取組を進めていく方針を全会一致で確認するとともに、新たな連携体制として「三重・奈良・大阪リニア中央新幹線建設促進会議」の創設を決議しました。
 今後、名古屋・大阪間の工事着工に向けた準備を円滑に進めるためには、環境アセスメントなどにおける奈良県、大阪府との連携がより重要となってくることから、早期開業に向けて関係者が一体となって取り組んでいきます。

防災・減災の取組

 近年、全国各地で集中豪雨が頻発していることから、県としても、紀伊半島大水害の教訓を踏まえ、今年度から「三重県版タイムライン」の試行を開始するなど、着実な備えを進めています。また、9月1日に南海トラフ地震を想定して実施した総合図上訓練では、現在策定している「三重県広域受援計画(仮称)」をより実効性のあるものとするため、救助や医療、物資関連の活動における受援体制の確立などの検証を行ったほか、今回初めてDONETを用いた津波予測を行いました。引き続き、県民の皆様の命と暮らしを守るため、しっかりと取組を進めていきます。
 なお、全国知事会危機管理・防災特別委員長として、6月30日から7月1日にかけて熊本地震の被災地を、また10月5日から6日にかけて東日本大震災の被災地である福島県を訪問し、復興の状況や現状の課題などをお聞きしてきました。今後の県における防災・減災対策に生かすとともに、引き続き被災地に寄り添い、支援と交流を行っていきます。

平成30年度に向けて

 平成30年度は、「みえ県民力ビジョン・第二次行動計画」の後半に入ることから、これからの県政にとっても非常に重要な意味を持つ年度です。
 県民の皆さんに、三重県で生まれ、暮らして、日本一幸福だと実感していただくため、明日への不安を取り除き、暮らしや経済が良くなっていくと実感できるような、また、夢や希望の実現に向けて前に進んでいけるような三重づくりを進めることが今を生きる私達の使命です。財政が深刻な状況にあっても、安全・安心の確保に向けた取組を着実に進め、三重の未来を切り拓くための攻めの取組に全力で挑戦しなけれならないと考えています。
 私たちを取り巻く状況に目を向ければ、頻発する大規模自然災害、歯止めのかからない人口減少、深刻な人手不足、子どもたちの貧困や虐待など明日への不安を感じる要素がたくさんある一方で、インターハイや三重とこわか国体・三重とこわか大会の開催、第63回神宮式年遷宮、リニア中央新幹線の開業など三重県がさらなる発展を遂げるための大きなチャンスが訪れようとしています。
 このような状況の中で、平成30年度は、「幸福実感日本一の三重」の実現に向けて、これまでの取組の成果と課題を踏まえつつ、より効果的に施策を推進するとともに、協創の取組を進めていく必要があると考えています。

注力する6つの取組方向

 具体的には、①三重で学び働く~人材育成・確保と働き方改革、②三重で育む~全ての子どもが希望とチャンスをつかむ社会的支援、③三重を強く豊かに~防災・減災対策とインフラ整備、④三重で生きる~安心を提供する医療・介護・福祉の充実、⑤三重で躍動する~人が輝くスポーツの推進、そして、⑥三重が選ばれる ~地域力・営業力のさらなる強化、という6つの取組方向に注力して県政を進めていきます。
 「①三重で学び働く」では、一人ひとりの輝く未来と希望に満ちた社会の創造に向け「三重県教育施策大綱」に基づく取組を加速させるとともに、誰もが能力を発揮し、いきいきと働くことができる環境整備に取り組んでいきます。
 「②三重で育む」では全ての子どもたちが生まれ育った家庭環境にかかわらず、愛情や優しさを感じながら健やかに育つことができるよう、さまざまな主体との連携を一層強化し、子どもの貧困対策や社会的養護の推進、児童虐待・いじめの防止等に向けた取組を充実させていきます。
 「③三重を強く豊かに」では、いつ発生してもおかしくない大規模自然災害の被害を最小限に抑えるため、ハード・ソフトの対策を強化していきます。また、大規模イベントの開催等を見据え、テロの未然防止に取り組みます。さらに、今後、県内で様々な行事が行われるというチャンスをしっかりとつかみ、地域の活性化につなげるため、交流の拡大等に資するインフラ整備を推進していきます。
 「④三重で生きる」では、誰もが住み慣れた地域で、質の高い医療・介護・福祉サービスを受けることができるよう、「三重県医療計画」などの諸計画に基づき、取組を着実に推進していきます。
 「⑤三重で躍動する」では、記憶に残る、三重らしいインターハイとするため、しっかりと準備を進め成功させます。また、東京オリンピック・パラリンピックに向けたPRの機会等を捉え、三重とこわか国体・三重とこわか大会の開催気運を高めるとともに、選手の育成を進めていきます。
 そして、「⑥三重が選ばれる」では、サミットで高まった知名度や成果を生かし、国内外の皆さんの三重県への関心をさらに高め、さまざまな分野で選んでもらえるよう、資源の磨き上げや情報発信等の取組を強化していきます。
 このような取組を通じ、県民の皆さんにしっかりと成果を届けることができるよう、職員と一体となって、全力で取り組んでまいりますので、引き続き、ご理解とご協力をよろしくお願いします。

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