0 三重プラス

そば処 老梅庵


三重にもこんなに美味い蕎麦がある!全国が注目する老梅庵の十割蕎麦。

NIKKEIプラス1「何でもランキング」のお取り寄せランキングで2位を獲得。昭和61年創業。
三重の素材にこだわって、蕎麦畑の土壌選びから始めた老梅庵の蕎麦は、つなぎを使わないで打つ十割蕎麦。
その風味、ノドごしの良さには店長、堀木のこだわりが生かされている。

堀木の人生を決めた師匠との出会い。

 店内に入ると出汁のよい香りが溢れ、耳を澄ますとカラカラカラと石臼で蕎麦粉を挽く涼やかな音が聞こえてくる。
 四日市市西新地に店を構える老梅庵は、地元素材にこだわった蕎麦処。オーナー兼店長である堀木栄司が28年前に開業した。
 「もともと蕎麦屋をやりたかったわけではないんです。家が商売をしていたので自分も何か商売をやりたいと思い飲食関係の勉強もしていました。当時、洋菓子屋を経営していた母親が、蕎麦屋はどうかと勧めたので、それじゃあという事で東京に蕎麦屋のバイトに行ったんです。その店の店主が後の僕の師匠となりました」
 堀木はその師匠と共に老梅庵を開業。店を営業しながら師匠から蕎麦作りのノウハウを学んだ。
 「普通は修行をしてから開業しますよね?でも、そうすると時間がかかる。そこで営業しながら腕を磨けば時間のロスもなくその間にも利益を生む、と考えたんです」
 漠然と飲食業をやりたいと思っていた堀木が、蕎麦屋をやろうと決心したのは、いい師匠に巡り会えたから。
 「この人にならついて行ける!と直感しました。人間的にも技術的にも素晴らしい人に出会えて本当にラッキーでした」
 縁は異なものだ。人の巡り合わせは人生を大きく左右すると堀木は感じた。堀木を支え、育ててくれた師匠は、今、高齢で引退したが今でも迷いがあると師匠を訪ね、教えを請うという。

単純で複雑。探れば探るほど奥が深い蕎麦の魅力。

 初めは「蕎麦屋でもやるか・・・」というつもりが、やっていくうちにその深さにはまっていったという堀木。
 「蕎麦は粉を練って切って茹でるという単純な食べ物。でも単純なものほど奥が深い。蕎麦粉の割合や、水、粉の産地、歯ごたえ、のどごし・・・何をとってもコレでいいと満足いくものにたどり着けない」
 そんな堀木の打つ蕎麦を食しに、隣県はもとより、関東、関西、東北、果ては北海道や九州からも客がやって来る。そこまで蕎麦通をうならせる理由は何なのか?それは、堀木の蕎麦に対する情熱ほかならない。
  「自分の求めているもの、お客さんの求めているものを追求していくと、原材料が全てなんだと答えが出た。だから収穫や製粉も全部自分でやることにしました。これならすべて自分の目が行き届き、自分の思い通りの蕎麦が打てますから」
 堀木は1997年より自家栽培に取り組む。
とはいえ、自分に蕎麦栽培の経験があるわけでもなく、知識もない。種の選別、蒔く時期、巻き方さえわかれば・・・と、思うものの、米ほど作られてない為かなかなか情報が入ってこない。どうやって自分の納得いく蕎麦を作ることができるのかと思案していた矢先、たまたま知り合いから蕎麦作りに失敗した農家さんがいる…という話を聞く。
  「その時は、あぁ、僕と同じように蕎麦を作りたいと思った農家さんがいるんだな、と思って。その方を訪ねて話をしたところ、それでいろいろ話を聞いたらお互い何か似た性格で…意気投合しちゃって、それじゃあ一緒に蕎麦を作りましょうか・・・という話になり、1999年からその農家さんと有機栽培を始めたんです」
 その農家というのが、有機栽培のカリスマといわれ、一流料理人から絶大な信頼を得ている「横山農産」の横山重治である。
 「米に関しては敵無しの横山さんも蕎麦は失敗するんだなぁ…って。最高の米を作る横山さんが作る蕎麦って、どんな味がするんだろう?と思いましたね。」
 2002年には横山氏と作った蕎麦を収穫。ここから全て自分の目と手がかかった蕎麦作りが始まる。いい相方に巡りあえたおかげで最高の蕎麦ができたと言う堀木。今は横山氏に蕎麦作りを全て任せている。
 理想とする蕎麦が収穫できた堀木の次なる課題は製粉だ。蕎麦を収穫したらまずは実に混入した石を抜く「石ぬき」そして蕎麦の実についた不純物を取り除く「ブラッシング」を2回、さらに皮を飛ばす「脱皮」を経てようやく実を挽く。
 蕎麦の味の8割が決まるといわれる製粉。堀木は理想の蕎麦粉を挽くため石臼挽きで製粉している。石臼で挽くと一言で言っても石臼の回転数、蕎麦の実の供給量、石の形や石の質などによって粉の出来が全く変わってくる。石臼の溝の深さ、本数など思う通りのものが見つからなかった堀木は理想の粉を挽くために自分で石を叩き、臼を作った。

自他共認める「蕎麦バカ」のマニアックなまでのこだわり。

 「どうしてそこまでこだわるのか?って聞かれますが、自己満足でしかないんですよ」
 堀木の言う通り、本人にしかわからないようなこだわりに執着する。例えば麺の色。一見、薄いグレーの麺には、よくよく見ると黒、茶色、黄色、緑、白の5つの色が入っている。蕎麦の表皮や蕎麦がら、蕎麦の実自体の色などが混ざり合って出来た色の粒だ。この色の入り具合で風味や歯ごたえまで変わってくるという。
 「製粉会社にこうやって挽いてくれって言っても伝わらない。でも、僕はそこにこだわりたくて自家製粉を始めたんです」
 一般的な製粉会社では粉のムダをなくすため一番きめ細かい1番臼で挽いた後、残りを2番臼、3番臼…と、7番臼まで挽き、最後は蕎麦がらの多く混ざった黒い粉になるまで挽く。が、老梅庵では1番臼で挽いた粉を1度ふるいにかけ製粉完了。1度で味を決めなければいけないため、蕎麦の実の供給量、臼の回転数、篩の目の大きさなどを堀木の感覚で絶妙に調節する。
  「蕎麦専門店として最高のものを提供したいので、もったいないけど篩にかけて残った粉は使わない。そこまでする必要があるか?とは思いますけどね。そのこだわりをお客様に押し付けるつもりもないし、お客様も知らなくてもいい。僕のやってることをわかってくれる人は何度も食べに来てくれる。それで僕は報われるんです」

僕の仕事は伝える事。三重県の蕎麦を全国に発信。

 素材に製粉にこだわった蕎麦を、全国の人に知ってもらいたい、食べてもらいたい。そんな思いから堀木は丹精込めて作り上げた蕎麦を通販している。その人気は高く評価され、2007年、日経のお寄り寄せランキングで第2位を獲得した。
  「通販なら、店に来れない遠方の方にも食べてもらえる。三重はそれほど蕎麦どころじゃないというイメージを持たれていますが、三重でこんな美味しい蕎麦が取れる、三重にこんな美味い蕎麦があるんだと知ってほしい」
 老梅庵は三重で創業28年。三重県で2番目に古い蕎麦屋だ。だが、30年そこそこで老舗と言われるというのは、まだ三重の蕎麦文化が浅く、根付いていない証拠。メディアのおかげで追い風もあり、蕎麦人気も高まり、客の蕎麦に対する知識も広がった。
  「売上比率は店の販売2に対し通販は1。結構力を入れてやっています。飲食店の片手間ではできませんね、飲食店と小売、それぞれの頭で考えないと。仕込み方、保管、管理、注文発送のシステム作り…これらがうまくいくことで、ウチの蕎麦…つまりは三重の蕎麦を広めることに繋がる」  老梅庵に来る客の中には京都、東京、神奈川からの蕎麦マニアも多い。これも通販の成果だと堀木は言う。
  「三重に蕎麦文化が根付けば、これから蕎麦屋をやろうとしている三重の若い人たちに技術、スピリッツ、ノウハウを繋いで行ける。僕らの仕事は伝える事。若い蕎麦屋の出現を敵対するのでなく仲良くしながら盛り上げたい」
 そして去年、堀木は地域貢献の一環として、四日市商業の学生と共に、四日市特産のかぶせ茶を使った抹茶蕎麦を作り楽天市場の大会に参加した。インターネットショップの授業として、学生たちが自分で企画・制作し、ホームページを立ち上げ、そこで実際に販売をして売上を競うという物だ。
  「僕は、ネット運営の構築指導と四日市茶蕎麦の製造を担当しました。学生たちには結構厳しく教えましたね。ものを作って売るという事は、どういうことかを実感して欲しくて・・・」
 最終審査は東京・高輪プリンスホテルでのプレゼンテーション。200人の投票とプロによるジャッジの結果、四日市商業が見事優勝した。
  「若い人たちが三重県の特産品を全国に広めようと頑張る姿勢に僕は共感しました。彼女たちが頼もしく見えましたよ。三重県には良いもの、美味いものがたくさんあるのに、なかなか他県に広まらない。僕は一生懸命いいものを作り、ネット通販やいろんな人たちとのコラボなど様々な形で、三重県のいいものを全国に広げていきたいと思っています」
 秋が深まり、また蕎麦の収穫時期がやって来る。同じように育てて、同じように収穫しても毎年違う蕎麦が実る。去年との違いを考え、どんな蕎麦を打とうか悩み考える・・・そこが面白いと堀木は言う。28年経った今でも試行錯誤。終わりは無い。

そば処 老梅庵

〒510-0087
三重県四日市市西新地11-3
059-351-9376
≪営業 時間≫
昼: 11:00~14:00
夜: 17:30~20:30 (L.O.20:30)

    ページのトップへ戻る