三重の企業人たち

株式会社四日市事務機センター社長 / 佐野智成

四日市事務機センター 佐野智成

【取材/2014年】
2014年に創業40周年を迎えた株式会社四日市事務機センターは、OA機器全般の販売、修理、保守管理、リース、レンタルなどを業務とする販売店である。東海圏屈指の契約数を誇り、キヤノンの制定するPSP(パートナーサービスプログラム)で最高ランクのAAAを9年連続獲得という輝かしい実績を持つ。会社を飛躍的に成長させるためには何が必要なのかを佐野智成社長に伺った。

地場企業として何よりも大切なのは会社一丸となって得る「信頼」

四日市市日永西に社屋を構える株式会社四日市事務機センターは、現社長・佐野智成の父、佐野幸男が昭和49年1月1日に創立した。智成が生まれる11ヶ月前に創立されたため、智成にとって四日市事務機センターはまるで先に生まれた兄のような存在。兄と共に歩んできたという思いで現在に至っている。
 子供の頃は年中短パン半袖で走り回る生キズの絶えないワンパク少年だったという智成。虫や動物が大好きで、しょっちゅう捨て犬を拾ってきては家に連れて帰り、多いときは10匹以上も飼っていたという。スポーツ、遊び、なんにでも興味を持って挑むが勉強だけは苦手で親を困らせた。
 そんな少年時代を過ごした智成は地元の高校を卒業したのち、パソコンの専門学校を経てキヤノンマーケティングジャパンに就職。父の後継者となるべく、大手メーカーで修行を積む。
 智成は就職当時、この事務機器販売の仕事がそれほど好きではなかった。若かった智成には事務機器販売の仕事の本質がまだよく分かっていなかったのだ。しかし、父親の言葉に事務機器販売の面白さを知る。
「父は僕によくこう言っていました。『仕事を好きにならないといい仕事はできない』と。この仕事、実は製品を売った後の方が大事なんです。それを教えてくれたのは父でした」。
 事務機器は販売したら終わりではなく、その後のメンテナンス、修理、消耗品、部品交換などのサービス需要でお客様との繋がりが続く。その繋がりをいかに存続させていけるか、それを左右するのが会社の信頼なのである。営業マンが飛び込みで獲得したお客様の、その後の信頼を保持していくのは営業マンのアフターフォローはもちろんのこと、電話や窓口で対応する事務員や、メンテナンスに向かうサービスマンなど社員全員。会社一体となって取り組んでいかなければ、競合相手の多いこの業界では生き抜くことができないと智成は言う。
「当たり前のことなんですが、お客様の信用・信頼を裏切らないために継続して最良のサービスを提供していくこと。つまり、お客様一人ひとりのことを長く長く思い続けること。そうすれば繋がりはより強くなり、より広がり、お客様と我々の間に絆が生まれる。そこに事務機器販売の面白さがあると言えますね」

「やる気がないなら今すぐやめろ」恩師の言葉で人生が変わった

 社会人となった智成が最初に就職したのはキヤノンマーケティングジャパン名古屋支店。当時、智成は父の会社を継ぐための勉強に来ているという意識で、どことなくお客様気分でやる気がなく、真剣味にかけているような状態だった。
 名古屋支店に勤務して1年ほど経ったある日、智成に当時の名古屋支店長が言った。
『やる気がないなら今すぐやめろ』。
 あっけにとられた智成に名古屋支店長は続けた。『お前本当にこのままでいいのか?父親の後を継ぐ気がないなら帰れ』と。
 「もう明日から会社に来なくていいと言われ、さすがに僕も焦りました。すると1週間待つから答えを出せと。もしやる気があるなら一番厳しい大阪支店の営業部隊にお前を放りこむ!と言われたんです」
 答えは考えるまでなく、やるしかない。それを機に智成は大阪で真剣に営業に取り組んだ。そして、その時に名古屋支店長と交わした約束がある。『毎月営業の結果とお前の心境を嘘なく手紙に書いて出せ』
「名古屋支店長とは何十通と手紙のやり取りをしました。嘘が書けないから、いい結果を書くために一生懸命頑張りましたね」
 智成は合計48通に及ぶ手紙のやりとりに正直な実績と気持ちを綴った。しかし、たった一度だけ嘘を書いてしまったことがある。大阪に来て1年目、数字に追われ、もう辞めて地元に帰りたいと思っていた矢先、苦し紛れについ売り上げの台数を多目に書いてしまったのだ。
 「普段手紙で返信が来るのに、その時に限って電話がかかってきたんです。売上の数字はデータによって管理されているので手紙に嘘の売上台数を書いたことはもちろんバレていましたが、嘘をついたことには触れず叱咤激励。名古屋支店長の声を聞いた事でまたやる気が奮い立ちましたね」
 離れた地にいても常に智成のことを気遣い心配し、支えていた名古屋支店長。教えてくれたのは『人を思う気持ちを忘れない』それは今の四日市事務機センターの経営方針そのものだ。
 昨年、当時の名古屋支店長は亡くなり、智成は恩返しもできないままと悔やむ。しかし、父から事業を継承しこの仕事を続けていることがせめてもの恩返しになると信じ、名古屋支店長の教えを実践している。

当社の自慢は、最新の顧客管理システムと細心のサービス精神

 26歳になった智成はキヤノン大阪支店の修行から戻り、四日市事務機センターに就職した。当時は、父・幸男が社長として腕を振るっていた。幸男は官公庁にも顔が利く存在で、その頃の四日市事務機センターは売上の8割が官公庁によるものだった。
 これでは官公庁のお抱え状態じゃないか…。会社の幅を広げていくためにもこれからは一般企業の顧客も増やしていかなければならない。会社の実態を知った智成は業態の見直しが必要と感じたため官公庁中心の販売先から民間企業へとシフトするために組織体を変えていった。
 智成が、父に代わって社長に就任したのは平成23年。37歳の時だ。四日市事務機センターのさらなる強みが必要だと感じた智成は、同業社との差別化を図るべく顧客管理システムの構築に力を入れた。
「事務機器屋はたくさんあります。でも本当に良いサービスをしているところは少ない。では、その良いサービスとは何かを考えたとき、お客様の小さな要望にも耳を傾け、ちゃんとそれに応えることだと思ったんです」。
 お客様の情報はサービス向上のための宝の山。そこで2009年から業界でいち早くクラウドシステムとタブレットPCを使って顧客の情報管理を行い、サービスに生かしてきた。購入履歴や修理情報、クレーム、評価などどんな小さなことでもその場で入力。顧客情報をクラウド上で管理して社員で共有することで、誰でもより早く細かな情報を現場で得ることが出来る。
 情報を共有しあうのでデータを元にすぐ話しあいができ、数字もリアルタイムに上がってくるので販売傾向も即わかる。
「今でこそこうした取り組みをしている企業は増えましたが、当社はその取り組みを早くから始めたと思います。お客様とのトラブルも無くなり、手がけた甲斐がありましたね」。
 こうした顧客管理システムをはじめ、四日市事務機センターではメンテナンス技術の向上や製品情報管理、サービスマン自ら営業を行うなど、サービス向上精神が実を結び、キヤノンの制定するPSP(パートナーサービスプログラム)で最高ランクAAA(トリプルエー)に9年連続で認定された。9年連続は中部地区7県で2社のみという輝かしい成果だ。

お客様と共に歩む企業でありたい。要望があれば事業拡大にも応えたい

 今や、四日市の事務器販売店といえば四日市事務機センターと名が挙がるほどの知名度を誇る同社だが、社長に就任する前の智成にはこんな思いもあった。
「自分が修行から帰ってきた頃は、おりしも横文字社名が大流行している時で、四日市事務機センターという社名がなんとなくやぼったく感じていた頃がありました。智成は父に横文字に変えましょうと言ったところ、「今の四日市事務機の社名でいけばいいよ。後ほど、智成もわかってくるよ」と言われました。そして、仕事をしていく中で、お客様から「ヨンジムさん、ヨンジムさん」と慣れ親しんで頂いていることがわかったんです。「ああ、四日市に根ざした事務機屋だから四日市事務機センターでいいんだ」と気づき、今ではこの社名に誇りを持っています」。
 地元に根ざしたサービスで、顧客の身近な存在に。様々な企業を事務機器でサポートする四日市事務機センターが抱くビジョンとは?
「やはり、四日市だけでなく、ゆくゆくは三重県全土の地域に自分たちのやってきたノウハウを提供していきたいですね。今後は津に津事務機センターを、伊賀・名張には2014年よりネットワークトップアシス(株)をグループ企業に加え、いつかは三重事務機グループという形を母体としてやっいきたいと考えています」。
 それを実現するためにはやはり、社員一人ひとりの力が必要だと智成は言う。中小企業は人を育てるのが難しいと言われる。何人入れたところで1年に育てられる数は一緒。それなら一人を徹底的に育て、人を育てられる人材を増やして行こうというのが智成の考え方だ。
 官公庁中心から民間企業へと業態を変え、今の土台ができた。現在は人を育てられる会社にしようと年に2人ずつ採用。社員が辞めない会社の体制を考えつつ、働きやすい環境を作り仲間を増やしていくことを念頭においている。
「なんといっても人がいないと続けていけない業界。いくらメーカーがいい商品を作っても単発売りでは生き残れない。その商品を永続的にお客様のために育て上げていくのが我々の仕事ですから」。
 お客様はもちろん、社員とも長く付き合っていける会社であるべき。その思いを胸に邁進する同社のさらなる飛躍が期待される。

代表取締役社長 佐野智成プロフィール

昭和49年11月 28日生まれ 四日市出身
座右の銘:人生は一度 
趣味:子供のサッカー応援

株式会社四日市事務機センター

三重県四日市市日永西2丁目18番地7号
Tel: 059-346-5411
HP: http://www.yj-c.co.jp
業務内容:複写機、コピー機OA機器全般、プリンター取扱。
オフィス関連のハード、ソフト等を販売・修理・保守・管理やインターネット環境、LAN環境、ASPの提案・構築、クラウドシステム構築サポート、リース・レンタル事業、中古販売。

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